国立台湾大学のメインキャンパス(台湾北部・台北市)には、「磯永吉小屋(または磯小屋)」と呼ばれる場所がある。かつて「台湾蓬莱米の父」と呼ばれる故・磯永吉(いそ・えいきち:1886-1972年)氏の研究室があったことから、このように呼ばれている。老朽化が進む中、台湾大学の卒業生らが18日、修繕に協力したいと70万台湾元(約258万日本円)の寄付を行った。
「磯永吉小屋」は日本式建築物で、すでに建築から92年の歴史を持つ。もとは日本占領時代、台湾総督府台北高等農林学校(のちに台北帝国大学に吸収)の作業室だった。作業室ではコメの品種改良が行われ、「蓬莱米」だけでなく、2016年に台湾の品評会で1位を獲得した「台南16号」などの開発も行われた。
また、ローマ法王庁科学アカデミー会員でもある故・張徳慈博士が「磯永吉小屋」で開発した「台中在来1号」と呼ばれるコメを、フィリピンの国際稲研究所(IRRI)に持ち込み、これをインドネシア米と掛け合わせて、生育が速く、収穫量が高い「インディア・ライス8(略称IR8)」と呼ばれる品種を育成した。この品種は、インドなどアジア諸国で広く普及。かつて東南アジアを飢餓の危機から救い、「奇跡のコメ」と呼ばれている。
「磯永吉小屋」は現在、台北市指定の史跡だが、老朽化に伴い修繕が必要となっている。大学側の見積もりによると、修繕には600万台湾元(約2,215万日本円)程度必要。現在のところ200万台湾元(738万日本円)の寄付が集まっている。
こうした中、台湾大学の第61期卒業生と第56期卒業生が18日、昨年実施した卒業40周年及び45周年の同窓会の活動費用の残金合計70万台湾元を、「磯永吉小屋」の修繕に充てるために寄付した。卒業生代表は、各界が積極的に寄付を行い、この貴重な史跡の修繕に協力してほしいと述べている。